»10話
2008'05.11
タクシーを使うのは勿体ないので、数キロ先の警察署まで走った。
たかが数キロとはいえ僕の体は思ったよりも体力がないらしくすぐに息切れを起こしてしまった。
着いたのは一時間後。まあ、話した時間通りになった訳だが
その前に呼吸を整えなければ尋問もできたものではない。
ネクタイを少し緩め、水道で水を飲んでから三階にある取調室に入った。
ノックをしてからドアを開けると、そこには色白の少年が俯いて座っていた。
そしてそれを取り囲むように三人のごつい警官。
どいつもこいつも何か聞きだしてやろうという気迫が漲っている。
これでは口を開こうにも開きたくないのが普通だ。
「何だお前は?」
三人の警官の内の一人がぎろりと睨みつけて僕に話しかけた。
「三木さんの紹介で来た新羅という者ですが。話聞いてませんでした?」
「お前が例の探偵坊主か。ちっ…お前みたいな部外者に協力を仰ぐ気持ちが分からんよ」
僕の事が気に食わないらしく、皮肉たっぷりの言葉を掛けられた。
「僕は坊主じゃありませんが」
多少の抵抗は試みた。しかし相手の嫌味は納まらない。
「ほう…言うじゃないか。話によるとお前も元警察関係者だったらしいな。
大方、楽な生き方に逃げたんだろ?そんな奴に俺たちと同等だと思われたくないがな」
「そんなことよりも口の利き方を学んだ方がいいんじゃないんですか?
あなたと僕は初対面なんですよ?」
「だからどうした。お前に払う敬意などこちらは持ち合わせていないのだからな」
「あのね。僕は一般人なんですよ。敬意など払ってもらわなくて結構です。
普通に話してもらえればね」
「こいつ…口ばっかりは達者だな」
今にも飛び掛ってきそうな感じで、場の雰囲気は最悪になっていた。
そんな時に丁度良く三木先輩が姿を現した。
「おう!来てたか…」
「先輩」
「三木さん…」
「何だ?揉め事か?」
僕らの口論がどこまで聞こえていたのかは知らないが、三木先輩も険悪な雰囲気を感じ取っていた。
「大したことじゃありません」
「そうです。誰もこんな部外者と揉めたりしませんよ」
三木先輩は言い訳をする警察を見て、やれやれといった様子で頭をかいていた。
「まあ、いい。早速本題に入るか…新羅、今からこの子と話をしてくれないか」
「え?ここですぐにですか?」
「ああ…この子も不慣れな場所でこんな、いかつい奴らと何時間も話していれば疲れるだろ。
だから今日はもう終わりにして家に帰してあげたいんだ」
三木先輩なりの配慮が伺える。しかしこの人はいつもそうだ。
物事を柔軟に考えられるから部下に対しての人望が厚い。
だがそれとは対照的に同僚と上司からは、あまりよく思われていない。
「お前らもここから出ろ。こんな狭い場所に大人五人もいたら窮屈でたまらない」
「いや、しかし…」
「心配するな。こいつのことは俺が責任を持って対処する。だからお前らも休憩してこい」
三木先輩に押し切られるような形で三人は渋々取調室をあとにした。
先ほどとは一変して静まり返った部屋の中。
三木先輩は部屋の隅にあるパイプ椅子に腰掛けると煙草に火をつけた。
僕は心を落ち着けると重要参考人の子と対面に座った。
未だにこちらを見ようともしせず、生気の無いような青白い少年が空ろな目で下をじっと見つめていた。
「あのさ…君は、何で連れてこられたのかな?
僕は警察関係者じゃないから何がどうなって君がここにいるのか理解できないんだ」
そんな質問にも無言のまま微動だにしなかった。
しかしそんなことは構わず僕の口は動いていた。
「僕なりにね、いろいろ調べて回っているんだけどさ、面白いことも分かってきてるんだ。
今回の事件とは関係ないかもしれないけどね」
この話をされると三木先輩が大きく反応した。
「何だよそれ!昨日何か分かったのか?」
口にくわえていた煙草を取って、背もたれに寄りかかっていた体を無理やり起こした。
「いや、だから事件とは関係なくこの土地の出来事を調べていてですね。
この町には面白いものがあるってことです」
「何だ…」
三木先輩は少しがっかりした様子で再び煙草をくわえると大きく吸い込んだ。
しかしこの話に反応したのは三木先輩だけではなく、翔という少年も同じだった。
がたがたと膝を震わせているのが見て取れた。
「どうかした?」
「い…え…別に」
明らかに様子がおかしい。
翔の放つ気配の雰囲気が変わっていくのが分かった。
11話に続く
たかが数キロとはいえ僕の体は思ったよりも体力がないらしくすぐに息切れを起こしてしまった。
着いたのは一時間後。まあ、話した時間通りになった訳だが
その前に呼吸を整えなければ尋問もできたものではない。
ネクタイを少し緩め、水道で水を飲んでから三階にある取調室に入った。
ノックをしてからドアを開けると、そこには色白の少年が俯いて座っていた。
そしてそれを取り囲むように三人のごつい警官。
どいつもこいつも何か聞きだしてやろうという気迫が漲っている。
これでは口を開こうにも開きたくないのが普通だ。
「何だお前は?」
三人の警官の内の一人がぎろりと睨みつけて僕に話しかけた。
「三木さんの紹介で来た新羅という者ですが。話聞いてませんでした?」
「お前が例の探偵坊主か。ちっ…お前みたいな部外者に協力を仰ぐ気持ちが分からんよ」
僕の事が気に食わないらしく、皮肉たっぷりの言葉を掛けられた。
「僕は坊主じゃありませんが」
多少の抵抗は試みた。しかし相手の嫌味は納まらない。
「ほう…言うじゃないか。話によるとお前も元警察関係者だったらしいな。
大方、楽な生き方に逃げたんだろ?そんな奴に俺たちと同等だと思われたくないがな」
「そんなことよりも口の利き方を学んだ方がいいんじゃないんですか?
あなたと僕は初対面なんですよ?」
「だからどうした。お前に払う敬意などこちらは持ち合わせていないのだからな」
「あのね。僕は一般人なんですよ。敬意など払ってもらわなくて結構です。
普通に話してもらえればね」
「こいつ…口ばっかりは達者だな」
今にも飛び掛ってきそうな感じで、場の雰囲気は最悪になっていた。
そんな時に丁度良く三木先輩が姿を現した。
「おう!来てたか…」
「先輩」
「三木さん…」
「何だ?揉め事か?」
僕らの口論がどこまで聞こえていたのかは知らないが、三木先輩も険悪な雰囲気を感じ取っていた。
「大したことじゃありません」
「そうです。誰もこんな部外者と揉めたりしませんよ」
三木先輩は言い訳をする警察を見て、やれやれといった様子で頭をかいていた。
「まあ、いい。早速本題に入るか…新羅、今からこの子と話をしてくれないか」
「え?ここですぐにですか?」
「ああ…この子も不慣れな場所でこんな、いかつい奴らと何時間も話していれば疲れるだろ。
だから今日はもう終わりにして家に帰してあげたいんだ」
三木先輩なりの配慮が伺える。しかしこの人はいつもそうだ。
物事を柔軟に考えられるから部下に対しての人望が厚い。
だがそれとは対照的に同僚と上司からは、あまりよく思われていない。
「お前らもここから出ろ。こんな狭い場所に大人五人もいたら窮屈でたまらない」
「いや、しかし…」
「心配するな。こいつのことは俺が責任を持って対処する。だからお前らも休憩してこい」
三木先輩に押し切られるような形で三人は渋々取調室をあとにした。
先ほどとは一変して静まり返った部屋の中。
三木先輩は部屋の隅にあるパイプ椅子に腰掛けると煙草に火をつけた。
僕は心を落ち着けると重要参考人の子と対面に座った。
未だにこちらを見ようともしせず、生気の無いような青白い少年が空ろな目で下をじっと見つめていた。
「あのさ…君は、何で連れてこられたのかな?
僕は警察関係者じゃないから何がどうなって君がここにいるのか理解できないんだ」
そんな質問にも無言のまま微動だにしなかった。
しかしそんなことは構わず僕の口は動いていた。
「僕なりにね、いろいろ調べて回っているんだけどさ、面白いことも分かってきてるんだ。
今回の事件とは関係ないかもしれないけどね」
この話をされると三木先輩が大きく反応した。
「何だよそれ!昨日何か分かったのか?」
口にくわえていた煙草を取って、背もたれに寄りかかっていた体を無理やり起こした。
「いや、だから事件とは関係なくこの土地の出来事を調べていてですね。
この町には面白いものがあるってことです」
「何だ…」
三木先輩は少しがっかりした様子で再び煙草をくわえると大きく吸い込んだ。
しかしこの話に反応したのは三木先輩だけではなく、翔という少年も同じだった。
がたがたと膝を震わせているのが見て取れた。
「どうかした?」
「い…え…別に」
明らかに様子がおかしい。
翔の放つ気配の雰囲気が変わっていくのが分かった。
11話に続く



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