»2話

 俺とみゆはこの世界の都市という場所まで移動していた。

 かつては三賢人が統治していたこの都市も今となってはゴーストタウンのようだった。

 廃墟のビルやら店が建ち並び、人がいるのかいないのか分からなかった。

 みゆが話すには、壊疽者の攻撃を避けるように人間は地下で暮らしているらしい。

「お前がこの世界を旅立って数ヶ月は経っているが、この世界はその時と同じか?」

「見た目だけでは違いは…ないな」

「だとすれば、この世界を中心に門が動いているのも納得だな。
ここから門を抜ければいつか分からない過去に飛び出すが、
 向こうからこっちに移動すれば門が出来上がった以後の世界の最先端の部分に飛び出す」

 粗方の世界の仕組みを把握しつつ、俺たちは街中を歩いていた。

 すると物陰から何かが飛び出してきた。

 そいつは人とも動物とも思えない外見をしていた。

 鋭い爪と硬そうな皮膚…二足歩行をしていて牙まである。

 俺がみゆと初めて会った時に見た得体の知れない生物そのものだった。

 なるほど…こいつが壊疽者という奴か。

 みゆは何も言わないですぐに短刀を手にして身構えていた。

「ぐあああああああああ」

 吠えながらそいつはみゆに向かって近づいていった。

「雑魚か…」

 俺はみゆの後ろに立っていた。

 壊疽者は鋭い爪を大きく振りかぶって襲い掛かったが、あんな大きな動作ではかわされてしまう。

 みゆは最小限の動きだけで全てをかわして、その身を一瞬で切り刻んだ。

 壊疽者の体は八つに分かれてそのままさらさらと砂のように消え去ってしまった。

「おいおい…」

 俺はそれを見てみゆの方に近づいた。

「海…こいつが壊疽者だ。しかもかなり下の階級のな」

「下のだと?それならまだ上がいるってことか?」

「ああ…壊疽者も進化を遂げているんだ。知恵を持ち力を付けて人に成り代わろうとしている…」

 三条織斗とやりあったときに門の中から出てきた巨大な腕を思い出した。

 そう言えば…あれがそうだったな。

「この世界もより強い生き物が残る世界になったんだな。
 まあ…それが自然の摂理か。しかしそれなら、早く何とかしないと、純粋な人間が全て滅びてしまう」

「だから私たちの存在があるんだ。壊疽者を殺すための存在に生まれたな…」

「相変わらず悲しいことを言うんだな。まあ、俺も同じか…知らなかっただけで」

 ありもしない過去を思い出すかのように憂鬱な気持ちになった。

「なあ、俺の出生については何も知らされていないのか?」

 俺はここの記憶が無いといっても言い位だ。

 だから知りたいという気持ちもあった。だから駄目元で聞いてみた。

 しかしみゆは困った表情を見せた。

「すまない…それは詳しくは分からない。それは、私の出生についてもだ…聞かされただけだから。
 しかし不死の力が備わっているのは間違いない」

「それは俺も思った。三賢人の能力と同じ感じがしたからな。
 リオに傷つけられた時も友人に怪我をさせられた時も数時間で治っていたからな。
 お前もそうだろ?」

「まあ…そうだな」

「時の雫の影響はいろんな形で世界に影響を及ぼしているのは間違いない。
 下手すると今のこの世界自体を飲み込む可能性がある。
 そうなる前にも六つの門を全て元に戻さなくては…」

 俺は辺りを見回しながら、遠くを見つめた。

 見えもしないそこには六つの門があるのには違いなかった。

 しかし先は長い…この世界というものがまるで分からない。

 自らの出生もそうだが、俺がいたさっきまでいた世界とは根本的に異なるのだ。

「なあ、ここに存在する人間とは話ができないのか?
 この世界のことだって彼らが一番良く知っているはずだが…」

 この状況を打破するために俺は提案したが、みゆは、うんとは言わなかった。

「それだけは…その…勘弁して欲しい」

「え?」

「私は、人間とは二度と会わないと決めているんだ…」

 その表情からはみゆの考えていることなど分かるはずもなかった。
 しかし、よほどのことがあったのだと思い、俺はそこは流すことにした。

「そうか…それなら、まずはどうしたらいいんだ?」

 俺はとりあえず方向性を変えるように考えた。するとみゆは間髪いれずに、

「我々の出生を先に探るのはどうかな?」

 と意見を出してくれた。

 そのことは俺が第一に知りたいことでもあったし、死ぬことになったとしても知りたいことだった。みゆの人間と会いたがらない理由はさておき、とりあえず先には進める。

「そうしたい…」

 素直に承諾すると、方向性はお互いにまとまった。

「場所は分かるのか?」

「ああ…ここから数キロ離れた場所にある。第五研究所という所だ」




3話に続く


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